公認会計士は医師、弁護士に並ぶ三大国家資格の一つです。
公認会計士は日本において、会計関連でトップクラスの資格といえます。
資格取得が非常に難しいのはもちろんのこと、高年収を得られるという点でも知られています。
公認会計士として活躍中の方やこれから公認会計士を目指す方にとって、年収は大いに気になる要素のひとつでしょう。この高年収を魅力に感じ、公認会計士を目指したり、取得した人は多いと思います。
公認会計士は高度な専門性を有する国家資格なので高年収のイメージを抱く方は多いかもしれませんが、実際のところ公認会計士の年収は本当に高いのでしょうか?
※本記事は10分程度で読むことができます。
公認会計士の年収は高い?低い?
公認会計士のリアルの年収は746万円
令和4年賃金構造基本統計調査をもとに計算した公認会計士及び税理士の年収は746万6,400円でした。
※算出方法:決まって支給する現金給与(残業等含む)47万6,800円×12ヶ月分と年間賞与そのた特別給与174万4,800円(企業規模計10人以上)
産業全体が496万5,700円であるため約250万円ほど高いことがわかります。
公認会計士 | 日本の平均年収 |
746万6,400円 | 495万5,700円 |
このデータでは税理士も含まれているため、公認会計士単体で見るともう少し高くなるかもしれません。調査方法や調査対象者に違いがあり、他サイトなどでは800万円や900万円など偏りがありますが、基本的に平均年収は700万〜900万円程度であると言えます。
ちなみに令和元年賃金構造基本統計調査では公認会計士および税理士の年収は683万5,500であったため、ここ数年で約60万円平均年収が上がっています。
コロナ禍であっても賃上げが可能である業界であり、他の職種よりも成長が期待できることがわかります。
今後、日本全体で賃上げのムードが加速するため、今後も公認会計士の年収は上がることが期待されます。
参照:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
e-Stat政府統計|令和4年賃金構造基本統計調査 職種別決まって支給する現金給与額、所定な給与額及び年間賞与その他特別給与額 表番号1
e-Stat政府統計|年齢階級別決まって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計・産業別)
公認会計士の生涯年収は2億8,385万円
公認会計士の生涯年収(生涯賃金)は2億8,386万円です。
ただし、公認会計士の平均年収747万円を基準に、「大卒の22歳から定年60歳まで38年間勤続した」という仮定に基づきます。
公認会計士 | 日本人の平均生涯年収 |
2億8386万円 | 1億8,848万円 |
日本人の平均生涯年収よりも1億円ほど高いことがわかります。
実際は、公認会計士という難関資格であることを踏まえると就労開始時点が20代後半や30代以降になる人も少なくありませんし、60歳を過ぎてもさまざまなキャリアで収入を得る人も多いです。
また、社会人を経由してから公認会計士にジョブチェンジした人や、昇進スピードが速い人、途中で起業して経営者になる人など、働き方は多種多様です。
ですから、公認会計士の生涯年収2億8,386万円はあくまでも目安に過ぎないものだとご理解ください。
年代別の年収
公認会計士の年収は年齢によっても大きく異なるため、年代別の年収相場も見てみましょう。以下は賃金構造基本統計(10人以上規模、男女計)をもとに公認会計士、税理士の年収を年代別に算出したものです。
年代 | 年収 |
20〜24歳 | 475万4,800円 |
25〜29歳 | 568万100円 |
30〜35歳 | 619万1,900円 |
36〜39歳 | 722万7,500円 |
40〜44歳 | 794万6,900円 |
45〜49歳 | 819万1,600円 |
50〜54歳 | 869万1,600円 |
55〜59歳 | 1,071万9,100円 |
60〜64歳 | 598万7,800円 |
年代が上がるにつれて年収も上がっていき55〜59歳には1000万円を超えています。
ほかの士業との年収比較
公認会計士と比較されやすい士業というと、同じ三大国家資格と呼ばれる弁護士でしょう。
賃金構造基本統計によると、弁護士(法務従事者)の平均年収は971万3,900円でした。
同じ方法で算出した公認会計士・税理士の年収は746万6,400円だったので、弁護士(法務従事者)の年収が220万円ほど高いという結果です。
しかし、上記の調査は法務従事者という括りであったため、弁護士の他に、裁判官、検察官など司法に関連する職種も混ざった結果であったため、正確にはこれほどの差はないことが予測されます。
実際、ハイスタ会計士の調査では弁護士の平均年収が739万円となっており、同エージェント調査によると874万円(公認会計士)よりも下回っているため、必ずしも弁護士の方が高いとは言えません。
また他の士業と比較すると、たとえば社会保険労務士の年収は514万7,500円なので、公認会計士・税理士の年収より230万円以上低くなっています。公認会計士は士業の中でも弁護士と並んで高年収の職種であることが伺えるでしょう。
公認会計士の勤務先別年収と年収アップの可能性
公認会計士の年収は働く場所によっても変わります。一般的な勤務先別の年収相場と、これから年収が上がる可能性についてみてみましょう。
- 監査法人
- 一般事業会社
- 税理士法人・会計事務所
- コンサルティング会社
- ベンチャー企業
それぞれ年収相場にどれくらい違いがあるのでしょうか?
監査法人で勤務した場合
勤務先ごとの公的データはありませんが、参考までに転職エージェント登録者の年収平均を確認します。「MS-Japan」登録者のうち、監査法人に勤務している人の平均年収は773万円でした。また「マイナビAGENT」登録者のうち、監査法人に勤務している人の平均年収は20代が522万円、30代が657万円となっています。
なお、監査法人は以下の職階別に年収が異なるという特徴があります。年収は目安ですが、職階が上がるにつれて年収もアップしていくことが分かります。
スタッフ(1年目~4年目):450~650万円
シニアスタッフ(5年目~8年目):600~850万円
マネージャー(9年目~14年目):1000万円程度
パートナー(15年目以降):1500万円以上
Big4監査法人の場合
公認会計士・監査審査会では、「上場会社を概ね 100 社以上被監査会社として有し、かつ常勤の監査実施者が 1,000 名以上いる監査法人」を大手監査法人と定義しています。具体的には以下の4法人が該当し、Big4監査法人または4大監査法人と呼ばれています。
公認会計士の平均年収 | Big4 (1000人規模) |
746万6,400円 | 861万円 |
法人ごとの年収データはありませんが、いずれも従業員規模1,000人以上にあたるため、賃金構造基本統計に照らすと年収は861万円となります。公認会計士・税理士全体の平均は746万6,400円だったので、Big4は全体平均より110万円以上も高い年収であることが分かります。
準大手・中小監査法人の場合
準大手監査法人とは、大手監査法人に準ずる規模の監査法人のことです。具体的には以下の5法人が準大手にあたります。
準大手監査法人は従業員数100~999人の企業規模にあたるため、賃金構造基本統計に照らすと年収は778万4,300円でした。Big4監査法人よりも年収が約100万円ほど低くなる傾向にあるようです。。
大手・準大手以外の監査法人は中小規模監査法人と呼ばれており、全国に200法人以上存在しています。中小規模監査法人は10~99人規模にあたるとして算出すると、平均年収は693万600円でした。
公認会計士の平均年収 | Big4 (1000人規模) | 準大手監査法人 (100〜999人) | 中小監査法人 (10〜99人) |
746万6,400円 | 861万円 | 778万4,300円 | 693万600円 |
準大手・中小監査法人の年収はBig4監査法人と比べれば下がります。ただしマネージャー・パートナークラスなら高年収が見込めるので準大手・中小で年収アップを目指すのも方法です。Big4と比べればライバルが少ないため昇進しやすいのはメリットでしょう。
とはいえパートナーになれるのは監査法人全体の1割程度とも言われており、一般にマネージャー以降は昇進が難しいケースが多いとされています。
一般事業会社で勤務した場合
一般事業会社では業種を問わず公認会計士を募集するケースが多くあります。配属部署としては、経理・財務部門や経営企画室が中心となるでしょう。
一般事業会社の年収は、監査法人のような目安はなく、会社ごとに大きく異なります。ほかの職種と同様に会社が定めた給与テーブルに当てはめて給与が決まるので、公認会計士だからといって特別に高年収になるわけではありません。
役職がない場合の年収目安は400万円~と、基本的には監査法人より下がるケースが大半です。
一般事業会社では経理経験のない公認会計士を採用するのはある程度リスクがあると捉えられる傾向にあるため、転職時の年収は抑え気味になっています。そのため監査法人から一般事業会社へ転職を希望する公認会計士は、年収が下がるのはある程度想定しておく必要があります。
ただし、公認会計士を募集する会社は大手や上場企業が中心なので、定期昇給が見込めます。会社によっては資格手当がつく場合もあります。また公認会計士は管理職に就くケースも多いため役職によっては年収アップする可能性があります。
税理士法人・会計事務所で勤務した場合
税理士法人・会計事務所で勤務する場合の年収は、法人や事務所の規模によって大きな差がありますが、一般的には監査法人より下がるケースが多いでしょう。メイン業務である法人顧問の報酬が下落傾向にあり、それが公認会計士や税理士の給与にも反映されている状況です。
また個人事務所のような規模が小さい場所で勤務する場合は一般事業会社のように定期的な昇給がないので年収アップにはあまり期待できません。
コンサルティング会社で勤務した場合
FAS系のコンサルティング会社も公認会計士の転職先として人気が高いですが、その理由のひとつに年収の高さが挙げられます。コンサルティングはクライアント企業の利益に直結するため、その分高い報酬が得られる可能性があります。
コンサル業務に就く場合は財務会計以外に多方面の知識や提案力が問われ、ハードワークでもありますが、一流のコンサルタントになれば数千万円稼ぐ人もいるため年収アップに期待できるでしょう。
ベンチャー企業で勤務した場合
ベンチャー企業では財務会計のプロである公認会計士の需要が高まっています。資金調達や助成金のアドバイスなど公認会計士が活躍できる領域が多くあります。
ベンチャー企業で勤務する場合の年収は大体500万~600万円くらいとなり、監査法人やコンサルティング会社で勤務するよりも下がるケースが多いでしょう。ただし上場を叶えたときには年収が大幅に上がる可能性があります。
上場できるかどうかは未知数であり、失敗のリスクも大きいですが、チャレンジングな環境に身を置きたい方には向いている勤務先です。
公認会計士が年収を上げるために効果的な4つの方法
これから年収を上げたいと考える場合には以下の方法を取ることが考えられます。
転職をする
転職は年収を上げるための大きな選択肢のひとつです。近年の公認会計士の転職市場は売り手傾向が続いており、採用意欲が高い法人・事務所が多い状況です。
コロナ禍で売り手傾向はやや鈍化したものの、コロナ禍だからこそ厳選採用の傾向が強まったことも年収アップには追い風となります。即戦力となる優秀な人材が欲しいと考える法人に転職する場合には、年収交渉で有利になる可能性に期待できます。
ただし一般事業会社のように給与レンジが決まっている場合は反対に年収が下がるケースがあります。転職の際には年収が下がったとしてもどこまで許容できるのかを決めたうえで、年収以外の軸をもつと満足度の高い転職につながるでしょう。
マネジメント経験を積む
マネジメント経験を積むことは、今の組織内で評価を上げること、転職市場での価値を上げることの両方に影響があります。監査法人ではマネジメント経験を積んで昇格すればほぼ年次に応じて年収が上がりますし、一般事業会社などほかの組織でも昇格すれば年収が上がる可能性が高いでしょう。
30代以降のミドル層が転職して年収を上げるにはマネジメント経験の有無が重要になります。特にインチャージ(主査)を経験していれば市場価値は高まり、転職を通じた年収アップに期待できます。
コンサルティング業務のスキルを習得する
定型的な監査業務にとどまらず、クライアントの利益に貢献できるコンサル業務のスキルを習得すれば公認会計士としての価値が高まります。どの組織にいても結果的に年収アップにつながる可能性が高いでしょう。
コンサルティング会社で勤務する場合は監査法人と同じような職階別の年収ランクがあり、相場も監査法人と同水準です。そこで、組織内での昇格を目指すか、今よりも高く評価してくれるコンサルティング会社へ転職することが年収アップの鍵となります。
また近年はコンサル領域に力を入れている税理士法人・会計事務所も増えているため、そのような法人・事務所への転職でも年収アップできる可能性があります。特にM&Aのアドバイザリーや経営・戦略コンサルタントとしてITシステムの導入に貢献したなどの経験があれば年収が上がりやすいでしょう。
社外監査役に就任する
社外監査役は監査をするという役割から企業法務・会計の知識が求められますから、公認会計士・税理士・元銀行員などの経験者が向いています。業務監査と会計監査を主に行うので、正しいオペレーションや会計ができているかが理解できる専門家が求められるため、社外監査役は法律・会計の専門知識を持つ人物が向いているといえるでしょう。
「社外」監査役ですかた常勤する必要はなく、月1の株主総会などに参加して意見をいうポジションが基本のため、通常業務を圧迫することもさほどありません。多い方は5社〜10社兼任される方もいます。
報酬は月30万円が相場ですが、5社、10社と増えていけばそれだけ収入UPにつながります。
独立開業する
税理士法人・会計事務所での勤務経験やコンサルティング会社での勤務経験を経て独立開業するのも、年収をアップさせるための選択肢です。独立後の年収には幅がありますが、初年度から年収1000万円以上となる人もいます。
独立開業の場合は会計・財務の知識だけでなく営業スキルも必要となり、年収を上げるにはどれだけクライアントを獲得できるのかにかかっています。
公認会計士の年収アップが叶いやすい転職先は?
公認会計士の主な勤務先である監査法人は、もともとの年収相場が高いため、転職しても年収が上がらないケースが多くあります。しかし以下のパターンであれば年収が上がる可能性がそれなりに高いと考えられます。
FAS系コンサルティングファーム
FAS系コンサルティングファームは財務デューデリジェンス業務など公認会計士の知識を活かしやすいため、監査法人からの転職と年収アップが成功しやすいパターンです。
すでにコンサルティングファームで働いている場合には、コンサルの経験を活かし、今よりも規模が大きいファームやインセンティブの割合が大きいファームへ転職すると年収が上がりやすくなります。
外資系企業の経理部門
監査法人から一般事業会社への転職では年収が下がるケースが多いですが、外資系は給与水準が高いため年収が上がる可能性があります。語学力や国際会計基準への理解など日系企業への転職とは異なるスキルが求められますが、監査法人と比べても見劣りしない年収を得られる可能性が高いでしょう。
ベンチャー企業のCFO
一般にベンチャー企業への転職は監査法人やほかの事業会社への転職と比べて初年度の年収は下がりますが、CFO(最高財務責任者)としての転職であれば年収1000万円程度のケースは少なくありません。上場を果たせばさらなる年収アップにも期待できます。
投資会社
稀なケースですが投資会社に転職する公認会計士もいます。投資会社の業務は企業のM&Aとの関わりが大きく、財務デューデリジェンスの経験などが活かせるため公認会計士のニーズがあるのです。
年収は5,000万円以上も可能となるなど、ほかの選択肢と比べて頭ひとつ抜けた状況が見込めます。ただし採用水準が高い、求人も少ないなど転職のハードルは非常に高いです。特筆すべき経験や実績がなければ難しいでしょう。
公認会計士の年収が将来的に下がるという話題についての真意
公認会計士の年収は現状では高水準を維持していますが、一時期、ある論文でAI(人工知能)に代替される業務の筆頭に会計業務が挙げられて話題になりました。
公認会計士の業務がAIに代替されて年収が下がる、あるいは仕事そのものがなくなると不安に感じた方もいるでしょう。年収が下がる可能性について解説します。
会計業務のAIによる代替可能性
実際のところ、公認会計士の業務が完全にAIに代替される可能性は低いと考えられています。
多くの人は公認会計士や税理士は簿記などの記帳をやる仕事であると勘違いしているかもしれません。公認会計士の主な仕事は監査です。
公認会計士の独占業務である監査は、事業活動の結果を決算書に反映できる仕組みが整っているか、経済動向や事業環境などから適切な将来予測を踏まえた決算書になっているかを判断する複雑な業務です。経営者とのコミュニケーションや深い考察が必要なので、AIにはできません。
ITリテラシーを高めることで年収が上がる
預金・売掛金の残高確認や棚卸資産の実査といった定型業務に関してはAIが得意とする分野なので代替される可能性は高いでしょう。しかし定型業務を自動化し、その分人間にしかできない領域に力を入れることで年収アップや効率アップに期待できます。そのためにはITリテラシーを高めることが大切です。
近年の公認会計士には会計知識を用いてITシステムの導入に関する助言を行うといった役割も求められており、クライアントにとってもITの知識・スキルが高い公認会計士かどうかは重要な問題となっています。
まとめ
公認会計士の現実的な年収は700万~900万円が目安です。日本の平均年収と比較すると高年収であると言えます。また、勤務先や保有スキルによっては数千万、数億円と稼げるかもしれません。
公認会計士として年収を上げるにはマネジメントやコンサル業務の経験を積む、転職するなどの選択肢がありますが、現在の勤務先や保有スキルによって効果的な方法は異なります。
もしも実際に年収を上げたい場合は公認会計士の転職事情に詳しい転職エージェントに相談するところから始めてみるのがよいでしょう。
公認会計士を目指す人はまずは短答式、論文式の試験を超えなければいけません。効率的に試験勉強するにはCPAやTAC、大原といった資格の学校に通うことをお勧めします。
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